人気ブログランキング | 話題のタグを見る

          
by guruuzu
===========

― 管理人:キタムラ ―
      [ Mail ]
guruuzu@excite.co.jp

===========

  各カテゴリについて

【黒】フェレット話です。傍若無人で細長い愛すべき動物。

【青】生き物・その他諸々の話です。生き物は爬虫両生類多し。

【紫】管理人の好きなもの達。無常の世のオアシス。



     2ndブログ
【のたくるしましま】

         ↑ 
管理人が好きな本だの映画だのについてだらだら何か言っています。まったくもって役に立つレビューではありません。


  このブログのカテゴリ別
  リンクへは↓からどうぞ
カテゴリ
【黒】 フェレット話
【青】生き物・ その他諸々
【紫】好きなもの達
以前の記事
2018年 01月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 01月
2010年 07月
2010年 05月
2010年 03月
2010年 01月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


【ヨウスケの奇妙な世界】 「のたくるしましま」より転載・第二回

紫カテゴリを追加した事によってもう誰も覚えてもいないだろう2ndブログが必要なくなったので、こちらに転載をしています。第二回。

「のたくるしましま」の名前はどうしても置いておきたいので、いつかどこかで何かに使う時が来るまでは閉めずに保存しておくつもりです。(本当に来るのかそんな時が)

しかし、この頃ってなんだかんだ言いつつ割とちゃんとレビューらしきものを書いているではないの。感心感心。

では、以下「のたくるしましま」より転載。



前回の魔太郎からのキーワード、「黒マント」で今回書かないといけない訳です。

次書く物が決まっていてそれに対してわざと「黒マント」を持ってきてると思われてるかもしれませんが、まったくの行き当たりばったりです。

よって、大変困りました。黒マント…黒マント…。黒マントといえばブラック・ジャック?でも何かベタだしなぁ。というので、これにします。


【ヨウスケの奇妙な世界】 全20巻 高橋葉介・著 朝日ソノラマ文庫 

【ヨウスケの奇妙な世界】 「のたくるしましま」より転載・第二回_e0001671_23372392.jpg



これに出てくる「夢幻魔美也」が黒マントを着ています。

…ん? あれはただの黒い服でマントではない?

いや、着てます。冬のシーンになると襟元にファーのついた黒いのを着てます。

…ん? あれはコートだ?

おだまり。いいの。あれはマントなの。(黒マントなんてキーワード持ってくるんじゃなかった…いや、そもそもリレー形式になんてするんじゃなかった…いや、それ以前にこんなカテゴリ増やすんじゃなかった…)


高橋葉介が生み出した夢幻魔美也には〈怪奇編〉の夢幻魔美也と〈冒険活劇編〉の夢幻魔美也の二通りが存在します。

〈怪奇編〉の方は文字通りの怪奇な世界。クールで妖艶な大人の夢幻魔美也、〈冒険活劇編〉の方はドタバタコメディ。可愛らしい子供の夢幻魔美也。

今回の【ヨウスケの奇妙な世界】に登場する夢幻魔美也は〈怪奇編〉の夢幻魔美也です。

この【ヨウスケの奇妙な世界】は高橋葉介の短編集という事で、夢幻魔美也が登場しない話もたくさん入っています。

高橋葉介の短編はどれもこれも何ともいえない奇妙な味わいで、かなり癖になります。

独特の描線がまたその世界観を強調しています。確か普通のGペンや丸ペンではなく、筆で描いているそうですが。

あらすじを書いてしまってもネタバレとかいう問題のストーリーでもないと判断して、今回はこの短編集の中から『墓掘りサム』を紹介します。


------------------------------------

とある村に「墓掘りサム」と名乗る男がやってきます。村人達は騒然とし、ついにこの村にも「あれ」がやってきたのかと取り乱します。

「ここだけは大丈夫だと…ちゃんと計算して、もう何年も「あれ」から無事で暮らしてきたのに…」。

しかし「あれ」からはどうやっても逃れられないのだと「墓掘りサム」に諭され、村人達は運命を受け入れます。

そんな村人に、「墓掘りサム」は薬を渡します。


「苦しみはありません。「あれ」がやってくると酷い死に方をしますから」と。


村の長の家に住むマル少年は「墓掘りサム」に懐き、ついて歩いています。「墓掘りサム」はマルに言います。


「今夜はパパとママの所にいた方がいい」。


しかしマルにはパパもママもいません。

パパとママが死んだので、村の長であるクトゥルおじさんのところ来たのです。

ママの形見の帽子を、マルはいつも被っています。


山の向こうに行ったことがないというマルに、山の向こうには何があって誰がいるの?と聞かれて、「墓掘りサム」は語り始めます。


「山の向こうには誰もいない。生きて動いているものは何もない。あるのは何百何千の十字架だけだ。私の建てたね」

「もう何年も昔の事だ。海の向こうで大きな争いがあった。殺し合いだよ。いくつも大きな火の柱が立った。人が大勢死んだ。数え切れないほどの人がだ」

「そしてその時にね、一緒に恐ろしい毒がばらまかれたのだよ。それはじわじわと広がって―――生き残った数少ない人々の上にも降り注いだ。「それ」から逃れる術はない」

「家の中で、道路で、車の中で、人は死んだ。あそこでもここでも男も女も老人も子供もみんな死んだ。私はその人達の墓を建てて歩いた。私の立ち去った後には十字架が並んだ」


どうしておじさんは死なないの? マルは当然の疑問を投げかけます。


「私は―――死なない。そのように設計されているから」


おもむろに顔の部分を取り外す「墓掘りサム」。

「墓掘りサム」は墓掘り専門の機械人形だったのです。

その夜、村人達は「墓掘りサム」にもらった薬を飲んで眠りにつきました。もちろん、マルも。


朝がやってきて、「墓掘りサム」はまた沢山の十字架を建てます。

「12201… 12202… 12203… 12204体め…」

最後の十字架に「墓掘りサム」は帽子を被せ、その場を離れます。

マルの被っていた、ママの形見の帽子です。


高い崖の上から無人の村を見下ろし「墓掘りサム」はひとり呟きます。


「もしも世界中の人間が皆死に絶えて、そしてこの俺もいつか壊れる時が来たら―――いったい誰がおれの墓を建ててくれるのだ?」


------------------------------------

『墓掘りサム』はどちらかといえば物悲しい話です。高橋葉介の物語は主には、

1・物悲しい系

2.怪談系

3.不条理悪夢系

4.暴走系

に分類できるのではないかなぁと思っています。

もちろんどれにも当てはまらないような話もありますし、2つが混在しているような話もありますが、まぁ大きく分ければこの4つかと。

件の夢幻魔美也が登場するのは、2の怪談系、もしくは3の不条理悪夢系ですね。

2の怪談系にも、よくあるような古き良き怪談話とサイコホラー的な怪談話とがありますが、そのどちらも先に書いた独特の描線のお蔭で完全に高橋ワールドになっています。

で、私が一番、これが高橋葉介の魅力だ!と思うのが、4の暴走系。

端的に言えば「やりすぎなんだよお前は!!」という突っ込み待ちともいえるような話です。

中でも特にお気に入りなのが『お気に召すまま』です。

これはもう絵からして素晴らしい!! 

拡大コピーして部屋に貼りたいくらい好きです。

主人公は彼氏に胸が大きければ君は完璧だと言われれば寄せて上げてシリコンをぶち込み、

肌が焼けていた方がいいと言われればグァムで1日16時間肌を焼き歩くメラニン色素と化し、

でもやっぱり冬は色白美人だよねと言われれば洗濯石鹸の風呂に浸かり漂白剤をがぶ飲みし、

髪を切れと言われれば剃刀で剃り上げ、

伸ばせと言われれば三段階増毛をし、

目がパッチリしていればと言われればカッターで瞼を切り取り、

大口を開けて笑う子が好きと言われれば口を切り裂き、

小柄な子がいいと言われれば両足首を斧で叩き切り…と、まさに「暴走」。

しかも瞼を切り取った辺りからは、登場シーン常に血塗れ。もう言う事ないです。

ちなみに、両足首を叩き切った時の彼女の雄姿。この絵大好きです。

【ヨウスケの奇妙な世界】 「のたくるしましま」より転載・第二回_e0001671_2346890.jpg


この後、彼女は足に包帯を巻いた姿で、ひょこひょこ彼に会いに行きます。

しかし悲しいかな、何でも男の言いなりになる女は好きじゃないと言い放たれ、彼女は絶望して自殺します。

そりゃあここまでした挙句じゃあ、絶望もしますわね。

まぁ、その自殺方法がまた暴走してるんですけど。

「手首を切り毒を飲み首を吊ってからガソリンをかぶって火をつけ線路に飛び込んだ」のです。

しかもそれでも死ねてない。未遂に終わってます。


そして、死ねなかった彼女はこんな事になってしまいます。

【ヨウスケの奇妙な世界】 「のたくるしましま」より転載・第二回_e0001671_23462848.jpg


いいでしょ?この絵も。

包帯ぐるぐる好きのメディカルフェチな人じゃなくても、ぐっと来るものがあるのではないかと思うのですが。

そうでもないですか?


この暴走系には他に、

「同じ女の子を好きになった双子が、困った挙句合体して2人で1人になったのに、女の子は女の子でどっちも選べないので体を半分に切って1人で2人になっていた」

という『双子の恋』や、

「小さい頃から反発し合いながら育ってきた2人の女の子が、自分が怪我をすると相手も同じ所に怪我をすると気付き、相手を不幸に陥れる為にお互いに水風呂を浴びて風邪をひいたりハンマーで足を砕いたりした挙句、もっともっとと暴走して結局2人とも腹を掻っ捌いて死んでしまう」

という『似たもの同士』などが含まれます。


それからこれは余談なのですが、映画の「ラン・ローラ・ラン」を観た時に、人物設定からプロットから何から高橋葉介の「走る女」という短編と全く同じで驚いたのを思い出したのでいろいろ検索してみたのですが、思ったより話題にはなってなくてそっちの方が驚きましたよ。

高橋葉介のファンサイトの掲示板でちょっと話が出たくらい。あとは2chでもちらっと話題に上ってたくらいでした。

高橋葉介を読む層とラン・ローラ・ランを観る層がそんなにかぶってなかったからかも知れません。

高橋葉介の漫画はいろんなのが出ているのですが、ほとんどが現行では注文でも手に入れることが出来ません。

スコラから出ているものなんかは古本で探すしかないのですが、なかなか見付からないですねぇ…。

『お気に召すまま』にはまだラストがあるので、気になった方は漫喫かなんかで探して読んでみて下さい。で、是非一度、高橋ワールドにハマってみて下さい。損はしないと思います。

と、前回と同じような締めでお茶を濁したところで、次回へのキーワード。

メディカルフェチ」。

包帯ぐるぐる「メディカルフェチ」です。なんかこのブログ自体の方向性が変わってきてる気がするのは単に気のせいですから安心して下さい。残暑厳しいですからね。

(「のたくるしましま」2005年9月) 

by guruuzu | 2009-07-25 23:42 | 【紫】好きなもの達
<< 【Torevor Brown】... 事故に遭ったよなんとなく後編 >>